外出制限から半月。オーストリアの今 ♯Stay Home

窓から突如鋭く青い光が差し込み、わたしの部屋の白い壁を青色に点滅させる。

外をのぞけば、道には救急車。

車いすを抱えて足早に駆け出していく、防護マスクを身に着けた救急隊員たちが見える。

遠くの国の出来事だと思っていたのは、たった1か月前のことだ。

その出来事は、すでにわたしの住んでいるこのストリートで、町中で起きている。

外出制限から2週間。ウィーンの今

コロナウィルスの影響で、屋内で100人以上集まって行われるイベントが禁止され、オーケストラ活動が不可能になってからすでに2週間以上がが過ぎた。

当初は3月末までだった外出&集会の制限措置は、4月13日まで延長になっているし、まだまだウィルス収束の兆しは見えない。

人々の間には

「この措置は、まだ延長するやつなのでは。。。」

という雰囲気が漂いはじめている。

今日午前の時点で、判明しているオーストリアのコロナウィルス発症者は8,813人。

毎日数百人単位で増えては来ているが、2週間の外出&集会制限の成果あって、その上昇率はゆるやかになってきているという。

外出制限とは言っても、今現在オーストリアではスーパーマーケットや薬局など密接に生活に結び付いている店は開いている。

また急を要する仕事であれば、お店の人とお客さんのコンタクトがあるような仕事でも許可されている状態だ。

ウィーン工科大学の数学者の計算によると、「学校は閉まっていて、仕事場は25%が閉まっている、プライベートの人とのコンタクトが通常の約50%になっている」今の条件で計算すると、今よりも制限をきつくしたところで、これ以上の成果はあまり見込まれないということだ。

なので、オーストリアはご近所フランスのように「家から1km以上離れたところを散歩してたから罰金」とか言うことには、ならない感じなのかもしれない。

今のところは公共交通機関さえ使わなければ遠出して、人のいないところを散歩することは問題がない状態だ。

オーストリアの対応は速かったと思う。

外出禁止措置が決定された3月11日の前日である、3月10日の新規コロナウィルス感染者数は51人(累計確定症例数は182名)だった。

その時点で、外出&集会の制限措置が決まったのだ。

正直、「本当に??」と驚いた。

その措置を施しても、今日で8,291人。

措置を施していなかったら、どんな人数になっていたのだろう。

考えるだけでぞっとしてしまう。

オーストリアの集中治療室のベッドの余裕

そもそも、この外出&集会制限の措置はコロナウィルスの莫大な増加を防ぎ医療システムに負荷をかけないための対策だ。

今のところオーストリアには十分の数の集中治療室、及び普通のベッドが利用できる状態のようである。
ただ、この状況がどれだけ続くかはオーストリアの対策の結果による。

現在オーストリア国内の集中治療室のベッド数は2,547床。
普段はこの82%が患者で占められているという。

もちろん、季節によってそのパーセンテージは異なる。
インフルエンザの流行する冬はもっと高いし、夏は少し余裕がある。

ざっくり一年間を平均すると、500床の集中治療室のベッドが利用できる状態なのだそうだ。

これは世界各国と比べると、特別少ない数字ではないという。
しかしコロナウィルスの感染爆発が起きているような現在の状況では安心してはいられない。

3月中旬の時点で計算された結果では、症例数が2日ごとに2倍になった場合に、オーストリアの集中治療ベッドは2週間でキャパシティを超えるとのことだった。
症例数が8日ごとに2倍であれば4月23日まで。
6日に2倍であれば4月16日で約900(2,451の集中治療ベッドの40%をコロナウィルスの患者のために使えると計算した場合)の集中治療ベッドがコロナウィルスの患者で占められてしまうという。

対策として、術後集中治療を必要とする、急を要さない病気の手術などは無期限で延期されることになっている。

また軽度のコロナウィルス患者のため、集中治療以外の病床の数を増やされている。
大きな展示会場や体育館などに追加された臨時のベッド数は6,000ほどだ。

しかし、人工呼吸器や集中治療のベッドはそのように簡単に増やすことはほぼ不可能に近い。
また、医療者のための防護服なども不足しており、医療関係者の感染の危険も高まっている。

Stay Home

オーストリアの人口は、約900万人。人口密度は1k㎡あたり107,4人(2020年)。

その国で外出、集会の制限措置が出たのが累計確定症例数が182名だった時。

措置発令から18日後の発症数は、それでも8,813人。死亡数は86名。

わたしは3月17日から4月20日まで実家に帰省するために一時帰国を検討していた。

1年ぶりに両親に会い、桜を見て、こどもに日本語の美しさと日本の楽しさを見せるのを楽しみにしていた。

泣く泣く一時帰国を見送ることを決定したのは3月上旬。

仮に、わたしや子供が気づかずにウィルスに感染していた時に、無意識にわたしの大切な人たちを傷つけたくなかったからだ。

日本は、感染者の発見がオーストリアよりはるかに早かったし、人口密度もオーストリアよりずっと上だ。(実に約3倍!)

それなのに欧米のような厳しい外出規制もないにも関わらず、感染率が他の国と比べて驚くほど少ない。

ウィルスは欧米で別のタイプに進化した?
日本人はもともと何らかの免疫を持っていた?
日本は衛生的な国だし、マスクを使用するから?
BCGワクチンが有効だったから?
そもそも、ほとんどテストがなされていないから?

その理由は、わたしのような一介の音楽家にはわからないけれど。

オーストリアで日本のニュースを見てるとドキリとすることがある。

美しい桜の木の下に集まる人々のニュース。
コロナウィルスの罹患数の少ない街に観光で訪れる人たちのニュース。
発病が疑われる状況で、人の集まる場所に出て行ってしまう人がいたというニュース。

どの国の、どんな措置が正解かなんて、未知のウィルスの前には誰にもわからない。

もちろん経済のこと、国同士の関係など、わたしなんかには想像もできないほど大きな問題があるだろう。

それでも。

大切な人に会いに行かないで、と願わずにはいられない。

今、会いにいけば、二度と会えなくなるかもしれなくなる。

その原因が自分となってしまう可能性があるという恐ろしさをわたしは自覚していたい。

オーストリアのSNSでは

「お前のじいちゃんは戦場で戦うことを強要された。お前が強要されているのは、お前の部屋のソファでダラダラすることだ。・・・家にいろ!」

という文句が拡散されされている。

Stay home(おうちにいよう)。

わたしは、わたしができるこの方法を選択する。

来年の春こそは、美しい日本の桜を見て、大切なひとたちに会いに行けることを祈って。

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