「正しい楽譜の読み方」インゴマー・ライナー教授の講義ノート

フェイスブックで「7日間ブックカバーチャレンジ」のバトンが回ってきました。

読書文化の普及に貢献するチャレンジで、本来はフェイスブックで本のカバーを7日間アップロードするだけでよいらしいのですが、せっかくの機会なのでブログに本を紹介していこうと思います。

一日目に紹介するのはこちら、



留学のためヨーロッパに渡ったわたしが、2つめに仕事をすることを許されたプロのオーケストラがドレスデン国立歌劇場でした。

『ドレスデン国立歌劇場は立派なオーケストラだけど、わたしだって日本のプロオーケストラで3年間演奏してきたんだ!委縮することはない。きちんと準備していけば、立派に通用するはずだ』

って思っていたのですが。。。。

はじめに「ん?」と思ったのが、バロックからロマン派に至るまでの演目での同僚たちのトリルのかけ方でした。

楽譜にはトリルの印が書いてあるだけなんです。

でもみんなはさまざまな種類のトリルを、申し合わせたようにぴたーっと揃えて弾いているんですよね。

リハーサルなんて、一度もしてないのにですよ!?

なのに、ぴたーっと合うんです。

一方わたしは

「え?なんでみんな今のトリル上からかけたの?で、なんでこっちは全打音の長さがやたら長かったの?」

と不審者のようにキョロキョロしながら、なんとかみんなのスタイルに合わせるように弾くのが精いっぱい。

当時は

「すっげー。これが伝統か。。。」

とかトンチンカンなことを考えていたのでしたが、

そうじゃないよ(笑)。

決まってるんですよー。というか、決まっていたんですよー。

ルールが。

ルールがあるんです。
その時代、その国でのトリルのかけ方が。

わたしがそれを知らなかっただけなんです。

音楽高校、音楽大学、そしてその研究科を出てプロのオーケストラで弾いていたくせに。

なんてことでしょう。。。。。。。

その事実に気づいたのは、ドレスデン国立歌劇場で働きながら平行して通っていたウィーン国立音楽大学の「古楽奏法」の講義の中でした。

その講義を担当していたのが、この本で紹介されているライナー教授でした。

教授はわたしたち学生が授業を聞いてようが聞いていまいが、あまり気になさらないのか(笑)、黒板の前をウロウロと行ったり来たりしながら講義内容をブツブツと詠唱するタイプ。

教科書もなければ、ホワイトボードに講義内容を書くこともなく、当時ドイツ語がほとんどできなかったわたしからしてみれば、

苦行

のような時間でした(笑)。

でも、試験はあるし、落第はしたくないしということで、わたしがとった対抗策は

授業を録音

そしてその録音を家で聞き、かろうじて聞き取れた「恐らく単語であろうという発音の固まり」を

カタカナで書き出し(笑)

それを、無理やりドイツ語に変換してみて辞書で引き、幸運にもそのドイツ語があったら意味を調べます。

で、その単語と単語をどんどんつないでいって、ようやく

「あー、こんな話してたんじゃないかなー?」

と納得するという、今考えてもアホとしか思えない気の遠くなるような作業をしていました。

留学志す人は、みんな語学勉強していこうね。
わたしみたいにならないようにね。。。。

でも、この授業の内容がわたしのその後の演奏に本当にたくさんの影響を与えることになりました。

テンポの決め方、装飾音のかけ方、アーティキレーションなど。

「は?これわたし、今まで知らないで仕事してきちゃってたけど大丈夫だったの?」

という内容のことをすごくたくさん学ぶことができたんです。

でも、授業が全部理解できたわけじゃないしなー。。

と思っていたところ、先生の授業の一部が日本語で本になっていることを知り、大喜びで購入したのがこの本です。

ライナー教授はチェンバロやオルガンを演奏されるので、特に鍵盤楽器の人の助けになる内容ですが、他の楽器の人も参考にできるアイディア満載の内容です。

実際わたしも

「あれ?ここのアーティキレーションはどうしたらいいんだろう。。」

なんて思った場合は、今でも手に取って参考にする大切な一冊です。

日本では、学校によって授業で古楽奏法が取り上げられたり取り上げられなかったりするようですね。

わたしの大学では選択科目だったのかな。。。
どう思い出してみようとしても、習った覚えがないんです。

もしかしたら、当時は興味がなくて寝てたから覚えてないだけかもしれないんですけど!

でも、わたしはその反省を生かして、今はどんな初心者さんにも、レッスン内でその時代時代の装飾音のかけ方や、アーティキレーションを伝えるようにしています。

理屈として学び、さらに実践していけることはとても楽しいことだと思うので、興味がある人は是非一度読んでみてくださいね。


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