バイオリン弾いてるときどこ見てるの?って聞かれたから考えてみた

この間レッスンしてたら、生徒さんに突如聞かれたんですよ。

 

バイオリン弾いている人って、いったいどこ見て弾いているんですか?

って。

そりゃ、知らない曲を初見で弾いているときなんかは楽譜をガン見してますけど(笑)、暗譜ができている曲を本番で弾いているときは、、、

弾いているときは、、、?

あまり考えたことがなかったので、今回ちょっとまとめてみようと思います。

演奏中に目をつむる人がいるけれど

アニメとかドラマでバイオリンを弾いているシーンがあると、奏者がよく目をつむって弾いていたりしますよね。
あれって、見た目的になんか素敵だからやっている、というよりは

視覚を遮断して、聴覚に集中してるからやる行動

なんだと思います。

ほら、おいしいものを食べたときに味覚に集中するために目を閉じて、
「うーん、おいしい、、」
って味わったりするやつ。

あれと一緒です。

本当に目をつむった方が自分の音がよく聞こえるようになるかについてについては、感覚的なんですけど、確かに目をつむって弾いたほうが聞きたい部分を吟味して聞き取ることができるような気がします

演奏中でなくても、例えば生徒さんの演奏でおかしい場所を探す時とか、一度に誰かがピアノで10個の音をバーンと弾いたとき、その中に何の音が入っているか聞き分けるときなんか、やっぱり目をつむりますかね~。

では、演奏中もずっと目をつむったまま弾いたほうがいいか?

っていうと、、、

それはわたしはあんまりしないんですよねー!

わたしだけなのかな?
他の演奏家たちの演奏スタイルも、見てみましょうか!

みんなどこ見て弾いてるんだ?

①ルジェ―ロ・リッチの場合

まずは、バイオリンの巨匠ルジェ―ロ・リッチを見てみましょう。

超絶技巧を弾きこなす演奏家としてとても有名ですね。
さあ、彼はどこを見て弾いているかな・・・?

パガニーニ作曲 「24のカプリース」 ルジェーロ・リッチ (Ruggiero Ricci - Life is a Violin )

ぱっと見目を閉じて弾いているかな?とも思われましたが、頻繁にパチパチ瞬きをしているのが見て取れました。
目は開けて弾いていますね。
視線は、弓や手のところを見ているように弾いている箇所もありますが、多くは何もない斜め下あたりのところをぼんやり見ている感じに見えませんか?
「目は開けているけれど、何かを確認するためにしっかり見ている」感じではないようです。

②クリスティアン・テツラフの場合

古典にもモダンにも両方強いドイツのバイオリニスト、クリスティアン・テツラフ。
彼は目をつむって演奏している時間も長いかな?
でもやっぱり多くの時間はうっすらと目を開けて演奏していますね。

Mozart: Violin Concerto No. 3 - Christian Tetzlaff /Paavo Järvi /Deutsche Kammerphilharmonie Bremen
マキシム・ヴェンゲーロフの場合

1727年製のストラディヴァリウス「クロイツェル」が愛器のヴェンゲーロフ。
ちょw フランクのソナタ、暗譜で弾いてるw
ソナタを片方が暗譜で弾くことについては賛否両論ありますけど、彼の場合はなんか自然に見えますね。

彼もほとんどの箇所では「うっすらと目を開けていて、どこも凝視していない状態」に見えます。ただ、感情が高まったときには、目をつむって演奏しているところも見受けられますね。

Maxim Vengerov - Franck: Violin Sonata in A major - Khatia Buniatishvili

目は完全に閉じないに軍配があがるかも

いろいろな演奏家の視線の先を追ってみましたが、完全に目を閉じて最初から最後まで演奏している演奏家は稀なような気がします。

私自身がどうしているか考えてみたのですが、やはりわたしも目を閉じて演奏する瞬間もありますが、大体のときは「ぼんやりと目を開けている」時間が多いような気がします。

なぜか考えてみて、思いついたことがあるので、挙げていきますね。

①目を閉じているとバランスが崩れる

人間の情報収集経路って、なんと視覚からが80%なんですって!
だから、この経路を断たれるとこの環境に適応しきれずにふらふらすることがあるようです。
ほら、目を閉じて片足立ちするのって、目を開けて片足立ちするよりずっと難しいじゃないですか。
演奏しているときは両足で立っているので、そこまでバランスが崩れるわけではありませんが、やはり視覚の遮断によって多少のバランスの崩れは起きるのではないかと思います。
それを防ぐために目はぼんやりと開けておいた方が「通常の感覚で」演奏できるメリットがあるのではないでしょうか?

②時々弓の位置などを確認したい

目をつむって弾こうが、逆立ちして弾こうが、完璧なフォームで弾ける人には関係ないフォームかもしれませんが、普通人間の体の構造上、バイオリンって弓をまっすぐに弾くのって難しいことなんです。
普段はできていても本番で興奮状態にあったりすると、フォームが崩れたり、体に余計な力が入ったりして、理想的でない場所を弓で弾いてしまうことも起こり得ます。
常に弓や手元を凝視することは、視覚に全感覚を持っていかれてしまうのでやめたほうがいいと思いますが、要所要所で自分のフォーム等を確認する目的で、弓や指の位置を目で捕らえるために目を開ける必要性が出てくることもあるでしょう

③伴奏者に視線で合図を送ることもある

目は口ほどに物を言う、なんてことわざがあるくらいだけど、演奏曲に共演者がいる場合、どうにかして一緒に演奏をする必要がありますよね。
熟練している演奏家同士であれば、大抵の箇所はそれこそ「息を合わせて」、つまり呼吸だけで合わせて弾くことができます。
でも、重要な箇所では視線で合図を送ることもあるんです。

だからピアノなど他の奏者と一緒に弾くときには、目で合図を送れる位置に立つというのもすごく大切なことなんですよね。

まとめ

バイオリン演奏中の視覚についてまとめてみます。

・演奏中は視覚はさほど必要ではない。ただし、目を閉じて完全に遮断するにはデメリットがある。
・目はぼんやり開けてはいるけど、大抵の場合において集中して何かを「見ている」ことは少ない。「見てる状態ではなくて、見えている状態」
・逆に、聴覚は最大限に研ぎ澄まされている状態を作るべき。本来人間は視覚80%、聴覚15%、体表からの情報5%という割り振りであるが、この振り分けをカスタマイズして聴覚に多く割り振る。
・「目は見てる状態でなくて見えている状態、耳は聞こえてる状態でなくて、聴いている状態」になるようにする

という感じでしょうか?

ただ、これはわたしの感覚的な意見なので「わたしはこう思うよ!」とか「科学的にはこうだよ!」というお話してくれる人がいらっしゃいましたら、教えてもらえればすごくうれしいです!

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