狩人の合唱を弾いてる方、何で狩人の歌っていうか知ってる?

新しいバイオリン教本や、鈴木バイオリン教本に登場する「狩人の合唱」
皆さんはもう演奏しましたか?
かっこいい曲ですよねー!
ちなみに、この曲なんで「狩人」って言うと思います?

実はこの曲、教本に出てくる多くの他の曲と同様、もともとはバイオリンのために作られた曲ではなく、原曲があるんです。

その原曲はウェーバー作曲の「魔弾の射手」というオペラの曲

オペラって歌劇のことですよね。魔弾の射手ってどんなお話なんでしょうか?

原曲を知ることは、演奏のヒントを得ることにつながる、でしたね。
では早速原曲の内容を見てみましょう

ウェーバー作曲 魔弾の射手

あるところにマックスという、若い猟師がいました。本来は射撃の名人なのですが、近ごろめっきりスランプに悩まされています。
彼にはアガーテというかわいい恋人がおり、二人は結婚したいと思っていました。
でも、結婚するためにはマックスの射撃大会の優勝が条件になっているんです。
スランプの真っただ中のマックスには、優勝できる自信なんてありません。

マックスにはカスパールという射撃のライバルがいました。
なんとこのカスパールは悪魔に魂を売っており、撃てば絶対に獲物に命中する魔法の弾丸「魔弾」を手にしています。
でも魔弾を手に入れる代償には、なんと自分の命を悪魔に引き渡さなければならないんです!
死ぬのは嫌!と考えたカスパールは、ライバルマックスの命を自分の命の代わりに引き渡す作戦を練り始めます。

カスパールから魔弾の存在を聞いたスランプ中のマックスは、その話の魅力に打ち勝てず、悪魔の魔弾を鋳造することを了承してしまいます。
これで自分の命の代わりにマックスの命を差し出せるぞ、と喜んだカスパールは悪魔を呼び出し「新しい魂をやるので、自分の寿命を延ばしてくれ」と交渉します。
ちなみに魔弾は全部で7発。
魔弾の6発は自分の狙い通りのものを打ち抜きますが、7発目は悪魔が望む場所を打ち抜くという伝説があります。
「7発目はマックスの恋人のアガーテに当ててマックスを絶望させようぜ」
とカスパールは悪魔にとんでもない提案を持ち掛けますが、悪魔は
「7発目の行方は自分が決める」
とその提案を蹴って姿を消します。

射撃大会当日。

ここで、バイオリン教本で演奏される「狩人の合唱」が狩人役の歌手たちによって歌われます。
魔弾を持っているマックスとカスパールもはもちろん絶好調。
ついに7つの魔弾のうちの最後の1弾がマックスの手の中に残ります。
「白いハトを撃て」
と領主に命令されたマックス。
悪魔が行き先を決められる7発目の魔弾は、ハトでなく、恋人アガーテでなく、なんとカスパールに命中し、カスパールは絶命します。

マックスは正直に魔弾を鋳造したことを領主に白状します。
怒った領主はマックスの国外追放を宣言しますが、本来は正直で誠実な彼の人柄を考慮され、1年の執行猶予を得ることができました。
1年後、マックスが再び問題を起こさなければ彼はアガーテとの結婚が認められることになったのでした。

魔弾に倒れたカスパールはかわいそうだけど、まあ自業自得なところもあるし、ハッピーエンドのお話と言えますね。

では、お話の全貌が見えたところで、早速原曲のコーラス部分を聞いてみましょう!

狩人の合唱の原曲を聞いてみよう

ウェーバー: 歌劇「魔弾の射手」 J.277 - 狩人の合唱(Weber: Der Freischutz - Huntsmen's Chorus)

歌詞の対訳をのせておきます。わたしの訳なので間違いがあればご報告ください。。。笑

Was gleicht wohl auf Erden dem Jagervergnugen,
Wem sprudelt der Becher des Lebens so reich?
Beim Klange der Horner im Grunen zu liegen,
Den Hirsch zu verfolgen durch Dickicht und Teich
Ist furstliche Freude, ist mannlich Verlangen,
Erstarket die Glieder und wurzet das Mahl.
Wenn Walder und Felsen uns hallend umfangen,
Tont freier und freud'ger der volle Pokal!
Jo ho! Tralalalala!

世の中に狩ほど楽しいものはない
誰のために生命の杯はこれほどまでに満ち溢れる?
角笛が響きわたれば、草に伏せ
茂みと沼を超えて鹿を追う
これぞ王者の喜び、男の願望
鍛えた身体とうまい飯
森とや岩がこだまを返しながら我等を囲み
満ちた盃に自由と歓喜が響き渡る
ヨーホー! トラララララ!

Diana ist kundig, die Nacht zu erhellen,
Wie labend am Tage ihr Dunkel uns kuhlt.
Den blutigen Wolf und den Eber zu fällen,
Der gierig die grunenden Saaten durchwuhlt,
Ist furstliche Freude, ist mannlich Verlangen,
Erstarket die Glieder und wurzet das Mahl.
Wenn Walder und Felsen uns hallend umfangen,
Tont freier und freud'ger der volle Pokal!
Jo ho! Tralalalala!

聡明な狩猟の女神ディアーナは夜を照らし
昼はその涼しき陰で我らを癒す
緑の田畑をどん欲に掘り起こす
血に飢えたオオカミやイノシシを倒すこと
これぞ王者の喜び、男の願望
鍛えた身体とうまい飯
森と岩がこだまを返しながら我等を囲み
満ちた盃に自由と歓喜の響きわたる
ヨーホー! トラララララ!

狩りを讃える、活気のある曲だということがわかりました!

余談ですが、この歌の伴奏にホルンが積極的に使われているのがわかりますか?
実はホルンの祖先コルノ・ダ・カッチャは、狩猟のときに用いられた楽器なんです。
コルノ・ダ・カッチャは馬に乗った家来が、後ろにいる王様に「ここにウサギがいるよ!」などと吹いて情報を与えられるように、ベルが後ろ向きについています
今オーケストラなどで見られるホルンのベルが後ろ向きについているのも、その名残なんだそうですよ。

このように狩の曲には、当時の名残でホルンという楽器の音色や、その独特のハーモニーがとてもよく用いられます。
このような雑学を頭に入れておくと、今後「狩り」に関する曲を弾く機会が現れたときに、曲想をぱっとイメージできるようになるでしょう。

原曲のイメージを踏まえて、演奏してみよう

原曲の音のイメージ、そして歌詞の内容も分かったところで!
いよいよバイオリンでどう表現するか考えてみましょう。
高揚している曲ですので、テンポはゆっくり過ぎてはいけませんよね。
また音と音がべたべたくっつく感じにしてしまったら、元気がなく聞こえてしまいます。
覇気のある感じが出るように、スタッカートは歯切れよく演奏したほうがよいでしょう。

また、よーく聞いてみると、すべての音を同じ強さで平たんに歌っていませんよね。
強く歌われている拍と軽く歌われている拍の違い、聞き取れるでしょうか?
それをバイオリンでも表現してみると、きっとメリハリのあるカッコいい狩人の合唱に仕上がると思いますよ!

まとめ

ウェーバー作曲「狩人の合唱」、聞いてみていかがでしたでしょうか?
イメージや情景を想像して、それを表現する楽しさは格別です。

楽しんで練習してみてくださいね!

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