バイオリンの持つとき、左手の親指の下には隙間を作るべき?

バイオリン弾くとき、左手の形を先生に注意されたことあります?

バイオリンのネックを親指と人差し指の付け根に落とさないように言われます。


こんな風にってことですよね。
多くの人が、下の写真のようにバイオリンのネックと親指の付け根の間にはトンネルを作れって一度は注意されているんじゃないでしょうか?

でも、そうしないと何が問題なんでしょう?
トンネル作らなくたってぶっちゃけバイオリンは弾けますよね?

確かに。
じゃあ、一緒に考えましょうか。
考えるにあたって、わたくし自ら今日、午前中オケのリハーサル中バイオリンのネックを親指と人差し指の間に落として弾いてみました!

・・・・結果。

弾きにくい!(笑)
圧倒的に弾きにくいわ!
わたしがいつもと違う持ち方しているから弾きにくいと思うだけなの?
と思って周囲を見回してみましたが、
やっぱりオケのみなさんもほとんど親指の下にスペースを作ってバイオリンを持っていますね。(笑)
これはなぜなのでしょうか?

メリットとデメリットを考える

メリット

親指と人差し指の間に楽器のネックを落とす現象は、小さな子供に多く見られます。
子供は指も短いですし、力も弱いので弱い握力を補うためにこの持ち方になるのだと思います。
親指の下に隙間をあけない持ち方は、握力の少ない人に「しっかりと安定して弦が押さえられている」「しっかりと楽器を持てている」という安心感を与えるのだと思います。

デメリット

自分で試してみて感じた、大きなデメリットは2つ。

1.指の長さが余ってしまう
2.摩擦のかかる範囲が大きくなる

この2つでした。

どういう現象か、ひとつずつ考察してみたいと思います。

指の長さが余ってしまう現象

バイオリンのネックを親指と人差し指の間に落とすと、そうでない場合に比べて1,5センチくらい指のリーチが長くなっていますよね。

指のリーチが長いほうが指が自由に動いていいと思いますけど。。

って、わたしもちょっとそう思ってたんですけど(笑)、実際演奏してみるとそうでもないんです。
弦を押さえるとき、求める音色や必要なテクニックによって押さえる指の角度は変化します。
ネックを親指の付け根に落とした状態では、この角度が限定されてきてしまうんです。

正確に言えば、どんな角度でも弾こうと思えば弾けるけど、ひと手間加えないと弾けない状態になるんです。

例えばE線を指の腹をべたっとくっつけて押さえようとしてみましょう。

・・あれ?できない。

あ。指の長さが余っちゃうから、すごく指を立てておさえないといけなくなっちゃうのね。

そうなんです。

だから、無理やり寝かせて押さえようとしたら、手首を曲げたり、肘を入れたり、と左手全体の型をぐにゃぐにゃと変えないといけなくなってしまうんです。

そして左手全体の型をグニャグニャ動かすことは、音程の不安定さにつながります。

だからやめたほうがいいんだわー

低弦に行くほどこの現象は軽くなっていきますが、それでもやはりこの持ち方だと左手手首でネックを支える形にしないことには指が押さえづらいのではないかと思いますよ。

みなさんはどうでしょう?試してみてください。

ちなみにその辺についての関連記事も貼っておきますね。

バイオリンを弾くうえで効率的な左手の形を考えてみたから聞いて
バイオリンを始めたときって、みなさん「この曲が弾けるようになるまではがんばるぞ!」っていう目標になる曲を持ってませんでし...

摩擦のかかる範囲が多くなる現象

これはすごい見た目にもシンプルな現象だと思うのですが、ネックを親指の付け根に落としたときには、ここに楽器が当たっていることになりますよね。
よく見えるように、バイオリンじゃなくてテレビのリモコンでやってみますね(笑)

トンネルを作った形だと、ここに当たっています。

楽器に触れている面積が多いのは前者ですよね。

別にいいじゃないですか、ちょっとくらいたくさん当たっていても

って思うかもしれませんけど、でも、ほら、チェンジポジションってあるでしょう?
チェンジポジションって何?って人はこっちね。

バイオリンのチェンジポジションの練習方法を紹介するよ①
みなさん、はじめて自転車でおでかけしたり、車の免許を取得した時のことを覚えているでしょうか? 「うわっ、やばっ!行...

指が楽器に触れている範囲が広ければ、チェンジポジションするときにかかる摩擦の範囲も広くなっちゃうんですよ。
摩擦が強くなれば動きにブレーキがかかり、すばやいチェンジポジションが間に合わなくなることがあります。

すごく速くチェンジポジションしたいときなどに至っては、少しでも摩擦を減らすために親指離したりするくらいですからね。

あと、ビブラートもそうですよね。
ネックを握りしめるように持ってしまうと、やっぱり動きがブロックされてかかりづらいと思う。

バイオリンを始めて間もないころはチェンジポジションやビブラートなんて技術は出現しませんが、先々のことを考えれば初めから摩擦の少ない持ち方にしておくのがよいのではないかと思います。

偉大なバイオリニストたちはどう持っているか観察してみよう

とまあ、わたしが言ってもあまり説得力がないと困るので(笑)、今日も大家たちの演奏の様子を例に挙げてみようと思います。

左手の下にトンネルがあるか注意して見てみてくださいね。

クレーメルの場合

Gidon Kremer - Astor Piazzolla oblivion

oblivion - Gidon Kremer - Astor Piazzolla

独特な奏法をすることで知られているクレーメルですが、左手の持ち方の脱力して美しいことと言ったら!
ほとんどの箇所で親指の下にトンネルを作って持っている様子がよくうつっている動画です。

メニューインの場合

Yehudi Menuhin Brahms Violin Concerto 1st Movement

Yehudi Menuhin Brahms Violin Concerto 1st Movement

大バイオリニスト、メニューイン。
難解なブラームスのコンツェルトですが、左手は完全に脱力して弾いていますね。
5分20秒くらいからカメラのアングルが後ろからになるので、左手の親指がどうなっているかよく見えますよ。
しっかりとトンネルが開いていましたね!

ギトリスの場合

Ivry Gitlis Saint Saens Rondò Capriccioso violinきょ

Ivry Gitlis Saint Saens Rondò Capriccioso violin

去年のクリスマス・イブに残念ながら他界されたギトリス。
独特な演奏スタイルで、魔法のように人を引き付ける魅力を持つ演奏をするバイオリニストでした。
彼もバイオリンのネックを指の付け根に落とさず演奏していますね。
親指がまるで生き物のように自在に形を変えて困難なパッセージの演奏を見事にサポートしているのが見えるでしょうか?

まとめ

右手の弓の持ち方の記事でも書いたことですが、右手にしても左手にしても
握っちゃいけない!

これに尽きるんだと思います。

いろんなテクニックを達成させるためには、時には左手の全体の型を変えたり、ネックを親指の付け根のところに落として演奏したほうが有利な瞬間もあります。

でもやはりデフォルトとしては、小回りが利くように、そして脱力していられるように、左手の親指の下のトンネルはオープンさせておくと良いのではないかな、というのが私の考えです。

みなさんも一度、両方の形で試し弾きをしてみてくださいね!

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