バイオリンのピチカートを綺麗に鳴らす方法を説明するよ

バイオリンの楽譜の中に「pizz.」という表示を見たことがあるでしょうか?

あ!あります。何でしょう、これ、pizz...ピザ??

確かに似てますけど、外れです(笑)これは、ピチカートという奏法のことなんです!

ピチカートという言葉、どこかで聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?

今日は弦楽器の奏法の1つである、ピチカートについてお話ししたいと思います。

ピチカートって何?

ピチカートとは弓で弦を擦るのではなく、指で弦を弾いて音を出す奏法です。
楽譜pizz.と表示されているときに行いますよ。

えっ?指で弾くって、どっちの?右手?左手?

いいところついてきましたね。正解は、、、両方です!(笑)

それではピチカートの演奏方法を説明していきますね。

ピチカートの演奏方法

右手のピチカート
バイオリンのピチカートと言えば、普通は右手で行うことが多いです。
pizz.の表示が見えたら、まず右手の指で弦を弾いてみましょう。

右手と言っても、指は5本ありますが、何指で弾けば良いのでしょうか

これは、テクニックの都合や求める音色によって使い分けてよいのではないかと思いますよ。

主に使われるのは人差し指中指です。

右手の人差し指ですか。。弓を持っているから、弾きにくいですね

そうなんです。

弓を普通に持った状態のまま、無理やり弦を弾きに行こうとすると、弓が邪魔になってうまく弾けません
また、何とかそのまま弾くことができたとしても、余韻の少ない痩せた音になってしまう可能性があります。

じゃあどうしろって言うんですか!

大事なのは、弦を弾く指がリラックスしていること
まずは、ピチカートをしやすいように弓をホールドしてみましょう。
普通の弓の持ち方はこんな感じですよね。
わたしはピチカートをするとき、この普段の持ち方とは違う弓の持ち方をしています。
また、状況によって大きく分けて3つの持ち方の使い分けをしています。
それは曲によって、ピチカートが出てくる前後の状況が違うからです。
ゆっくりとピチカート用の右手の持ち方を準備できる曲もありますが、アルコ(弓で弾く奏法)からピチカートへの切り替わりが速すぎて、物理的に準備どころではない曲もあるからです。
それでは具体的にどんな持ち方ができるかひとつずつ紹介していきますね。
①急いで弓を持ち変えなくてよいとき
もしも、ピチカートの前後に休みがあり、ゆっくりと右手の準備ができる場合は、こんな風に弓を握ってしまうことがあります。
中指、薬指、小指、親指はフォークのように弓を握り、人差し指だけが伸びています。
人差し指は、脱力した状態です。
メリット
・人差し指がリラックスして自由にしなり、響きのよいピチカートになる。重音のピチカートに特におすすめ
・安定して弓を持つことができる
デメリット
・準備に時間がかかるので、ピチカート前後に音があるときには間に合わないことがある
・右手が自由に動きすぎて、弾く弦を間違える危険性もある
②持ち代える時間は一応あるけど、ピチカート前後に音があるとき
このパターンは、弓の持ち代えは可能だけど、弓を握ってしまったらその前後で不都合が出る場合の持ち方です。
普段は第二関節が弓の木に当たっているのに対して、ピチカートの時は、第二関節と指の付け根の間に弓の木が当たっています。人差し指が、いつもより前方にニュッと出ている感じです。
メリット
・それなりに人差し指は自由にしなるので、響きのあるピチカートの音を出せる
・短い時間でも持ち代えが可能な手の形であり、すぐにアルコに移行できる
デメリット
・弓を握るよりは不安定
・素早く持ち代えを行わなくてはならない
③持ち代える時間が全くない場合
ピチカートの前後すぐに弓で弾く音があるという、鬼のような曲も存在します(笑)。

そんなときは、もう弓を持ち代えている時間はありませんので、普段弓を持っている手の形のまま、人差し指をすっと伸ばすだけということもあります。

メリット
・すばやくアルコとピチカートを切り替えることができる
デメリット
・人差し指の稼働範囲が少ないので、ピチカートの音が固くなりがち

これらを曲の状況によって使い分けているんですね

はい、さらに右手の親指をどこに置くかも考えるんですよ

ピチカート中の親指の位置

上記①の手の形のように弓を握ってしまっている場合は別ですが、②,③の手の形の時は

右手親指を楽器のネックにつけるかつけないか

も考えてみたほうがいいでしょう。

親指をネックにつけるときの手の形はこんな感じになります。

ネックに親指を付けることのメリットって何なんですか?

親指がネックについていると、指と弦との距離感がつかみやすいので、間違えて全然違う弦を弾いちゃったり、指がスカッと空気を弾いちゃう危険性が少なくなります(笑)。

あと、かなり速く弾けますね。

親指をネックにつけるメリット

・親指がネックに固定されているので、間違った弦を弾いたり、弦に指が届かなくて空気をスカッと弾くような動作になることを防ぐことができる。
・速いテンポで連続して16分音符をピチカートで弾くときなどにおすすめ

デメリット

・親指が固定されているため、人差し指が動きづらく、詰まった音のするピチカートになる危険性がある

これらのことを踏まえて、ただ単にピチカートと言っても、どんな持ち方をするのか考えて弾くと、ミスも少なく響きのよいピチカートを出すことができます。

余談なんだけど、ピチカートだけで成り立っている曲や、長くピチカートが続く場所などでは、そもそも弓を持たないで演奏することもあるんですよ

ここでは、ピチカート奏法だけでできている可愛らしいオーケストラ曲、ヨハン・シュトラウスの「ピチカート・ポルカ」をご紹介しましょう。

弓を持たずに、演奏しているのが見えるでしょうか

右手親指をネックに固定していない奏者、固定して演奏している奏者それぞれいるのが見て取れると思うので、奏者の右手の形にも注目してみると面白いでしょう。

Johann and Joseph Strauss - Pizzicato-Polka (The New Years Celebration From Vienna, 2012)
左手のピチカート

バイオリンも中級以上の曲になってくると、右手だけでなく左手を使ったピチカートが要求されることがあります。

ピチカートが右手で行われるべきか、左手で行われるべきかを判断するのは、楽譜にどう記されているかで判断できますよ。

左手のピチカートは、このように音の上(下)に単にバツ印が書かれているか、この楽譜のように「左手で」m.g(main gauche)と書かれています。

ちなみにこの楽譜ではたまたまバツ印と「右手で」m.d (main droite)という表示が一緒に書かれている箇所がありますね。m.dの指示がある場所は、バツ印でも右手でピチカートをしてください。

左手のピチカートの演奏方

①まず出したい音を4以外の指で押さえます。

ここでは例として、A線のシの音を左手のピチカートで出したいとします。
普通に弓で演奏するときと同様、ファーストポジションの1の指をシの音の場所にセットします。

開放弦の音を鳴らしたい場合は、押さえる必要がないので、この手順はカットしてください。

②次に、①の音を押さえたまま、押さえている指より高い音が出る指(この場合は2,3,4の指いずれか)を弦にセットします。
この写真では3の指を使っています。

いつものように真上から指を押さえるというよりは弾きやすいように弦の左側のほうに②の指をセットすると強い音がでます。

③②の指で弦を左から右に一気に巻き込むように強く弾いて、①の音を鳴らします

②でセットする指は、どの指でもよいのでしょうか?

これも、前後の状況によって使い分けする必要があります。
もしも、この音を弾く前後の左手が忙しくなければ、一番良い音で弾ける指を選択するとよいでしょう。

一番良い音を出すためには

・①でセットしている指より遠い指のほうが自由に動くのでよい音がする可能性がある

・小指は細くて弱いので、よい音が出づらい

この二点を踏まえて、どの指を使うか考えるとよいでしょう

例外

左手のピチカート直前、または直後に使う指でピチカートをしようとすると、ピチカートが間に合わないことがあります。

そんなときには、一番良い音がする指をあきらめて、テクニック的に無理のない指で弾く必要があります。

では、ここで左手のピチカートが大活躍する曲パガニーニのカプリースより24番をご紹介しましょう。

動画再生位置は、左手のピチカートが始まる3分7秒からに設定しておきました。
楽譜と合わせ見てみましょう。弓とピチカートを組み合わせたかっこいいパッセージですね!

Hilary Hahn - Paganini - Caprice 24 - Sheet Music Play Along

ピチカートでよい音を出すコツ

指板の上を弾こう

始めてピチカート奏法をする人は、十中八九駒と指板の間、つまり「弓で擦る場所」を指で弾こうとするのですが、ここはピチカートするには弦の張力が高すぎる場所です。

ここで弾いてしまうと、固い音がしてしまいますし、なにより指が松脂で真っ白になってしまいます。(笑)

ピチカート奏法をするときは、普段弓で弾いたら絶対に先生に怒られる場所、指板の上を弾きましょう。

指のどのあたりで弾くべき?

一口に「指」と言っても、指の中にもいろいろな場所がありますよね。
指のどのあたりで弾くかは、そのときの状況やどんな音が出したいかによって変わってきます。

①速い箇所でなく、やわらかで響きのある音、または大きな音のピチカート

指の腹で弾きましょう。
指をべたっと寝かせて弦に押し付け、右肘から先を動かして弾きます。

弦に指を押し付けているときは、指がまっすぐになる感じで、どの関節もほとんど曲がっていません

このピチカートのときは、親指はネックにつけないほうがよいでしょう

②素早く軽いピチカート

速いテンポでピチカートが続くときは、指の関節を自然にまげて、指先で指の第一関節から小さく弾きます

弾く方向

弾く方向も、2種類のピチカートに分けて考えましょう

①速い箇所でなく、やわらかで響きのある音、または大きな音のピチカート

曲げていた右腕を右斜め前に素早く伸ばす感じです。

指が駒と平行に動くというよりは指の軌道が右斜め前に進んでいきます。

こう弾くと、余韻が多い響きのあるピチカートができるのでぜひ試してみてください。

素早く軽いピチカート

このタイプのピチカートは指の第一関節をくるっと巻き上げて弾くだけなので、指の動きは駒と平行になります。ちょうどポリポリと痒い所を掻くときのような指の動きになると思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ポンポンと弾むような楽しい音のするピチカート。

今回ご紹介した双方のほかにも、弾く方向が一方向でなく、往復で指の腹と爪交互に弾くギターのような奏法、人差し指と中指交互に速く弾く奏法などバリエーションは数多くあります。

弾くだけ、と聞くと簡単そうですが、響きのよい美しい音をピチカートで出すのはそう簡単なことではないので、ぜひぜひ音色にこだわって練習してみてくださいね~!

 

 

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