バイオリン弾くときどうやって立つ?有利な立ち方について考えてみたよ

わたし、発表会やコンクールの前に必ず生徒さん達にお願いすることがあるんです。

それは舞台上での立ち位置の確認

立ち位置って、音的にも見た目的にも結構大事だと思うんです。
でも、案外それを練習する機会ってないんですよねー。

小さなお子様に特に多いのが、グランドピアノの窪んだ所の前で正面を向いて、おへそを観客の方に向けて弾くパターン。

プロのバイオリニストの演奏を見てみるとわかると思うのですが、舞台上でこのような立ち位置をとる人はまずいません。

え?本当かって?
じゃあ一緒に見てみましょうか!

みんなどうやって立ち位置をとってるんだ?

クリスチャン・フェラスの場合
Christian Ferras - Igor Stravinsky, Chanson russe

フランスのバイオリニスト、クリスチャン・フェラス。柔らかく香り高い音色が印象的ですよね~。
動画を見てもわかるように、彼はピアニストの若干後ろに立ち、聴衆には自分の右半身を見せて弾いています。
典型的な立ち位置の取り方だと思います。

ミッシャ・エルマンの場合
MISCHA ELMAN, violin. H. Wieniawski - Romance (Violin Concerto No.2, 2d movement)

その甘美な音色に「エルマン・トーン」なんて名前までついてしまったほどの音を持つミッシャ・エルマン。
今度はオーケストラと共演している舞台上での立ち位置です。
なんか、お立ち台があって(爆笑)立つ位置については固定されてしまっているのですが、向きに関しては彼もやはりお客さんに右半身を見せている格好になっていますね。

イツァーク・パールマンの場合
Schindler's List シンドラーのリスト パールマン ニューヨークフィル

シンドラーのリストのテーマ曲でパールマンの存在を知ったという方も、少なからずやいらっしゃるのではないでしょうか。

重厚な響きが胸に響きますね。

彼の場合も、時々楽器のネックを少しだけお客さん側に向けてくる瞬間もありますが、大体の場合は右半身を客席に向けて演奏していますね。

なぜバイオリンは右半身を客席に見せて演奏するのか

ここまで見てもらうと、とにかく共通するのが
「バイオリンを演奏するときは、正面を向くのではなくお客さんに右半身を見せて演奏する」
ことだとお気づきになられたのではないかと思います。
ちなみに私自身が学生のときに自分の先生から立ち方は

「右半身を客席に向ける。でも真横ではなく、ネックは少し客席に向けて少し斜めに立つように」

というものでした。

でも、それは何故なんでしょう?みんながやっているから?
それとも科学的に理由があるのでしょうか?

気になって調べてみたところ、やはり先人の知恵は確かなものだったことがわかりました。

バイオリンの音がどのようにその空間で飛んでいくかを科学的に分析したデータがあったので見てみたんです。
すると発せられた音が放射状に広がっていく中で

バイオリンにおいては奏者の右半身側、楽器のネックから自分の右手のあたりまでの範囲(ネックの位置を時計盤の12時としたら12時~3時くらいの範囲)に特に高い音圧がかかっている

ことがデータから見て取れました。
まあバイオリンの音はf字孔から出てっているので、この結果には納得できます。
でも、一点私が驚いたことが。

それは右手から背中にかけての範囲(3時から6時の範囲)には、そこまで音が飛んでいっていないことでした。

え。
と、するとですよ?

自分の右手から背中にかけての方向に座っている人には、音はあんまり飛んで行っていない?(汗)
それでもって、不必要にネックの先にあるホールの壁には音がきちんと飛んで行ってしまっているってこと?

そう考えてみると、わたしの先生が言っていた
「右半身を客席に向ける。でも真横ではなく、ネックは少し客席に向けて少し斜めに立つように」

っていうのは、ものすごく理にかなった立ち方だったんだなー。

これならば12時から3時の位置にほとんど客席が入りますからね。

今更だけど、すごいな、先生。恐れ入りました。

過去のソリストや先生たちは、放射線状に広がる音圧をデータにとって観測していたわけではないはずなので、やっぱり誰かに客席に座ってもらって、どうやって演奏したら一番客席に音が飛ぶかを研究していたんだろうな。

むやみやたらに伝統のみで、みんな同じ向きで弾いているんじゃないとわかってすっきりしました。

知っていれば複数の奏者がいるときの配置の参考になる

ここまで書いて私がふと思い出したのは、トーマス・ツェートマイヤーとルース・キリウス夫婦の演奏。

一度、ドイツでこの夫婦ソリストのバックで演奏した時に

「この二人、目を合わせられないのにも関わらず、二人とも同方向を見て弾いているなー」

と思っていたんです。

ブリテンのドッペル・コンツェルトの映像がたまたま見つかったので貼っておきます。

Benjamin Britten: Double Concerto for Violin and Viola | Soloists: Thomas Zehetmair, Ruth Killius

ね?

二人でアイコンタクトが取れないリスクを度返ししてでも向き合って演奏せず、二人とも右半身を客席に見せて弾いていますよね。

これは、アイコンタクトなどしなくてもどのみち息はばっちりだし、サウンドを優先して立とうぜ、という作戦をを取った結果なんだと思います。

また、弦楽四重奏などで普段は左半身側がお客さんに向いてしまうビオラや、配置によってはセカンドバイオリン奏者が、ソロが出てきた時に体を捻って楽器のネックを客席に向ける動作をする場面を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

これも、ソロのメロディーがより豊かに響くようにする工夫なんですね。

まとめ

たかが立ち方、されど立ち方。
同じ演奏をするなら、客席に向かって有利に響くように立ち位置をとるとよいですよね。
演奏時は奏者はお客さんに語り掛けるように演奏しているもの。

その表現、伝えたい内容によって、客席に対するバイオリンの角度を変えてみれば、さらに幅広い表現が可能になるのではないかと思います。

なおこちらは、わたしの拙い感覚、知識からの記事ですので、「さらに科学的に詳しいデータがあって、実際はこうだよ」とか「自分の感覚ではこうだよ」というものがあれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです!

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