バイオリンの音にも子音と母音?子音をはっきり弾くメリットは?

突然なんですけど、内緒話って小さな声でしゃべってても結構しっかり聞こえたりするじゃないですか。

あれって何でなんだと思います?

もちろん声の周波数の影響もありますけど、わたし、あれは子音をすごくクリアに発音しているからじゃないかって思うんです。

日本語や英語など、言語って子音と母音で成り立っていますよね。

わたしは個人的に、バイオリンなど楽器の音も似たようなシステムで発音されていると考えています。

今日はバイオリンの音の「発音」について考えてみたいと思います。

子音がないと何を言っているかわからない

例えば口で「バイオリンを弾く」という文章を言ってみるとします。

そのとき、すべての子音を曖昧に発音するとどうなるでしょう?

「バイオリンを弾く」はたちまち「あいおいんおいう」になってしまい、一体何を言っているんだかわからなくなってしまいますよね。

「え?」と聞き返されたら、みなさん自動的に今度は子音をはっきりめに発音して「 VIOLIN WO HIKU」と言い直すと思います。

すると、今度は問題なくしっかり文章が伝わります。

バイオリンの音にはK、S、Tなどの明確な子音の音はありません。

でも楽器の音の立ち上がり+響きという組み合わせと言語の子音+母音の関係は、とても似たところがあると思うんです。

楽器の音の立ち上がり、言語で言う子音の部分をはっきり弾かないと、バイオリンの音はふがふがと曖昧な響きになってしまい、クリアに聞こえません。

さっきお話いした「バイオリンを弾く」が「あいおいんおいう」に聞こえてしまうような現象が、バイオリンの音にも起きてしまうのです。

子音をはっきりって言われてもピンとこない。。。

という人は、試しにピチカートでバイオリンの弦をはじいてみましょう。

すると音は、大体こんな感じの滑り台のような波形になるんじゃないかと思います。(イメージです!)

はじいた瞬間に一番大きな音が鳴り、そのあとには余韻が残ります。

その余韻は特に細工をしない限り、徐々に減衰していくのが自然ですよね。

このはじいた瞬間の音の立ち上がりが「子音」で、あとに残って減衰していっているのが「母音」だとイメージしてみてください。

はっきりと弦をはじけば、カーンという硬質な音がします。
柔らかくはじけば、ボワンという柔らかな音がするでしょう。

バイオリンは母音のカスタマイズが自由!

先ほどのようなピチカートと似た波形で演奏される代表楽器は、ピアノではないでしょうか?

現代のピアノは、楽器の中でハンマーが弦をたたいて音を出しています。

なので、ハンマーが弦をたたいた瞬間が一番強く、そのあと自然に音は減衰していきます。

ピアノの余韻が自然に減衰せず、急に大きくなったり小さくなったりしたら、そのピアノはお化けピアノですよね。

叩いた音やはじいた音の余韻は基本的に、自然に消えていくものだからです。

でもバイオリンは違います。

バイオリンは弓で擦る楽器ですので、発音した後に母音の部分を大きく膨らませたり、小さくしたりと、自由にカスタマイズすることができます。

たった一音の中でも、ピアノや打楽器には基本的に不可能なこういった感じの波形を実現することが可能なんです。(イメージです!(笑))

この母音の部分をどれだけ繊細に、曲に合わせて型作ることができるかで、バイオリン演奏のレベルは天と地ほど変わってきます。

逆に言えばここがカスタマイズされていない演奏は、とても子供っぽく聞こえてしまうんです。

母音のカスタマイズの仕方は星の数ほどありますが、まず簡単に変化させられるのは音量だと思うので、母音の音量を変えてみるトレーニングをするのは結構お勧めです。

バイオリンで音量を変えるための方法についてはこちらにまとめてあるので、よければ参考にしてみてください。

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子音が一種類になってはいけない

子音の話にもどってきましょう。

バイオリンの音をクリアに聞かせるためには、子音、つまり音が立ち上がる瞬間、音が産まれる瞬間をきっちりと弾く必要があります。

子音を曖昧に、いつの間にが忍び込むように演奏する表現もありますが、ソロにおいてはごく稀な表現だと思います。

そうでないと大きなホールでは特に、音と音が混ざってしまってもやもや聞こえてしまったり、どこで音が始まったかわからないのでリズムが曖昧になるからです。

わたしの日本の師匠がよく言っていた言葉に

「1から100までアクセント」

というものがありました。

当時それを「すべての音にアクセントをつけて始まらなければいけない」と解釈していた学生だった私は

「そんな風に弾いたら攻撃的な演奏になるから嫌だ!」

と反発していました。

でも、今大人になった今となっては、彼の理論には一理あったことがわかります。

彼の理論とは、

すべての音の子音ははっきりと発音されていなければならない
でもすべての子音が一緒になってはいけない。柔らかく立ち上がる(1のアクセント)子音もあるし、強く立ち上がる子音もある(100のアクセント)

というものだったのでしょう。

「アクセント」という表現に抵抗があっただけで、100個音があれば100個の子音があり、絶対にすべてが同じになってはいけないということであったのならば、納得できます。

そう思うと、バイオリンには日本語や英語などの言語よりも、もっともっとたくさんの子音があることになるんですね。

音楽ってすごいです。

どうやったら子音をはっきり発音できるのか

ではバイオリンにおいて、どうやったら子音をはっきり弾けるのか、つまりクリアに発音できるのかについて考えてみましょう。

バイオリンって弓で弦を擦っていますよね。

バイオリンの弓の毛は、弓を張っているときは薄っぺらい一本のきしめんのように見えます(笑)。

でも弓を緩めてみるとわかるように、実際は細い馬のしっぽの毛が束ねられている状態なんです。

この1本1本の馬の毛のキューティクルが弦をこすったときに起こる摩擦で、バイオリンの音は鳴り始めるのですね。

バイオリンの音を立ち上げる瞬間に大事なのは

弓の毛のキューティクルが弦にしっかり噛みついている、弦に引っかかっている感覚を右手の手の中に感じることです。

なんとなく弓を弦の上において、すっと横に引っ張るだけでは、毛が弦にしっかりと引っかかっておらず、擦るのではなく上を滑っているだけの状態になってしまう危険性があります。

そういうときは「しゃわしゃわ」「ざらざら」という雑音のような音で立ち上がり、その後に弓が何とか弦を擦ることができたらやっときれいな母音の音が鳴りますし、最後まで滑りっぱなしであれば、最後まで「しゃわしゃわ」「ざらざら」した滑った音のまま終わります。

弓の毛のキューティクルが弦に噛みついている感覚をつかむためには、弓を弦の上においてみて少しだけ指で圧力をかけながら短くギ、ギ、ギ、と引っ張って音を鳴らしてみましょう。
音がいつ始まったんだかわからない、という感じではなく、始まった瞬間が点としてわかるイメージでやってみてください。

そういう音を出す時には、弓を持った右手の指が、弓を通して弦を引っかくように小さな圧力をかけようとしていませんか?

わたしはその役割をする指は「人差し指」だと習ってきました。

確かに多くの場合は「人差し指」がその役割を担います。

しかし様々な子音の種類を実現するためには、人差し指だけでなくてもかまわないと私は考えています。

時と場合によっては中指のこともあるし、薬指のこともあります。2本、3本の指を同時に使うこともあるでしょう。

大切なのは

・右手の指がすべて独立して、ものすごく繊細に弓の振動を感知できるくらいの状態になっていること

・出したい子音の音にふさわしいだけの圧力やアタックで、ふさわしい指が弓を通して弦に噛みつくことで、クリアに音を立ち上げること

です。

ちなみにこのクリアな子音の発音ですが、ダウンボウでは割と簡単にできるようになりますが、アップボウは難しいです。

アップボウって重力を反対方向に弓を進めなくてはならないので、どうしても弓の毛がひっかかりにくいんですよね。

ですので、ダウンボウよりもアップボウの子音の部分をより注意して音を弾くと、全体を通してよりクリアなサウンドの演奏ができますし、リズムが転んだように聞こえることも少なくなるでしょう。

自分の演奏を録音してみて、やたらダウンの音だけ強いな、とかアップの音だけすっぽ抜けてるな、とか思ったことってないですか?

そういう人は、アップの音の子音をはっきりと点で立ち上げてみようとしてみてください。

きっと状況が改善されるはずです。

まとめ

今回はバイオリンの子音と母音、特に音の立ち上がり部分である子音のお話をしました。
ぜひ、音が発音される瞬間に気を配って演奏する練習をしてみてくださいね。

次回は、演奏が平たんに聞こえなくなる母音の変化のさせ方を書いていきたいなと思っています。

なおこの記事は、わたしが演奏していて受ける印象で書いていますので、「いやいや、待って!科学的にはこうだよ」というご指摘がありましたら、ぜひ教えていただければ嬉しいです!

 

 

 

 

 

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